ジャズフルート奏者小島のり子@日本酒を飲んで、その銘柄のネーミングと味わいとを合わせて、曲にして吹いています。
日本酒との出会いや味わいのことと、そこからできたオリジナル曲のことを書いて行きます。
※作曲年代順に並べます。
※蔵のある場所も作曲のヒントになりました、ので、記しておきます。
※リンク
日本酒を曲に綴る、その1日本酒を曲に綴る、その3--
@獺祭(だっさい)-純米大吟醸,磨き三割九分
「Bridge In The Afternoon」
山口県周東町獺越、旭酒造。
2007年9月作曲、CD「Lush Life」収録。
[お酒について]エヴァンゲリオンやキューティハニーの庵野監督にも愛される、岩国の名酒。おりがらみや、発泡にごりも素敵です。
このお酒の味わい、すっきりしていて、少し酸味があって控えめな香りもあって、透明感と、どこか華やかさのある美味しさ、美しい味わい。これを曲にしたい、とずっと思っていました。以前に「Otter's Fest」という味わいとは無関係の曲を書いているので、それとは別にもう一曲、と思ったのです。
[曲について]2006年4月、山口県岩国市の錦帯橋に初めて行きました。桜の咲いた雨の日で、木でできた大きな橋の階段をゆっくり上がって降りました。しめやかで美しい春の午後。このときの景色を、獺祭の味わいとブレンドさせて曲にしました。美しいジャズワルツになりました。さらりとした感じですが、実は転調をくり返していて難しいです。この辺りは、このお酒にたいするリスペクトというか、わたしのこだわりというか…。
三割九分、といたしましたが、50でも48でもOKです、造るお酒総てが純米大吟状の蔵、獺祭の味わいの曲です。

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@七田(しちだ)-純米無濾過
「Seven Ways To A Kiss」
佐賀県小城市、天山酒造。
2008年1月作曲。CD「Lush Life」収録。
[お酒について]エ天山酒造は「天山」というお酒がメインブランドで、「七田」は、比較的新しいお酒です。六代目蔵元が自分の理想とする味わいを、情熱とこだわりを持って醸した清酒とのこと。低精米の七割五分磨きシリーズは年々素晴らしい味わいになっています。このお酒は濃さのあるしっかりした味わいですが、すっとした澄んだ水の味わいも感じられる。そして、おつまみを選ばず、炒め物などにも合います。
[曲について]味わいのしっかりした、旨味もたくさんの、美味しく飲み飽きないお酒。色っぽさのあるお酒です。馥郁とした色っぽい曲、をめざして書いてみました。クロマチックを使ったメロディーは最初の4小節に7音、次の4小節も7音でできています。後半は次第にペンタトニックになり、和と、コンテンポラリージャズの味わいがある曲になりました。

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@開運(かいうん)-特別純米
「For Better Days」
静岡県掛川市、土井酒造。
2008年1月(?)作曲。CD「Lush Life」収録。
[お酒について]静岡のお酒は、それまであまり飲んだ事がありませんでした。この、飾り熊手のラベルの開運祝酒を飲んだときは、その美味しさにびっくり。甘すぎず、香りすぎず、酸味も強すぎず、薄すぎず、バランスのとれた嬉しくなるような味わい。飲む度に笑顔になる美味しさです。祝酒以外にもいろいろ種類がありますが、ひやおろしがまた美味しい。
[曲について]この曲は表参道で、日本酒&ジャズライブ、の企画があり、それに向けて書きました。笑顔のこぼれるような美味しさと「開運」というおめでたい銘柄は、パルチドアルトというリズムパターンのサンバになりました。ちょっと聴くと明るい曲、ですが実はマイナーで切なさもある、このサウンドにも、開運の味わいを入れたつもりです。

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@大七(だいしち)-純米きもと
「The Water Clock」
福島県二本松市、大七酒造。
2008年10月作曲。CD「Lush Life」収録。
[お酒について]近くのコンビニに置いてありました。賞を受賞したと書いてあって飲んでみたところ、しっかりした味わいのなかにキレもあって美味しい。いっぺんで気に入りました。シンプルな銘柄名もかっこいい。別の時に酒屋さんで「なにか味わいのある純米を飲みたいのですが…」と相談したところ、このお酒を薦められました。大七にはぶれない美味しさがいつもあるように思います。
[曲について]松尾芭蕉の連句「冬の日」の朗読のために書き下ろした「秋水一斗もりつくす夜ぞ」を、大七の曲にしました。ダイナミックなペダルの曲。秋の水、一斗、もりつくす、夜、という言葉が、大七のしっかりした味わいに合っていると思っています。CDでは、収録曲中で男性陣の一番人気の曲となりました。

@温羅-無濾過生原酒
「Mythic Goblin」
岡山県岡山市、酒のみむら、プライベートブランド。
2008年2月18日作曲、CD「Lush Life」収録。
[お酒について]岡山の酒屋さん「酒のみむら」のプライベートブランド。三村勝則プロデュース、(有)板野酒造場さんが造っています。数年限り、ということでなく、個人で毎年造って販売しているのは凄いことだと思います。三村さんのお酒にたいする情熱を感じます。お米も地元のものをつかい、岡山のお酒らしく、しっかりした味わいと美味しさ、バランスもいいです。
[曲について]その三村さんが「うちのお酒を曲にしてほしい」と、四合瓶を持って岡山のライブハウス=バードにいらしたのは2007年でしたか。温羅は、桃太郎に退治された鬼の名前ですが、製鉄を吉備の国に伝えた百済の王子、という説もあります。いずれにしても、鬼の名前をお酒の銘柄にするとは、ユニーク。桃太郎と戦う温羅の姿とその哀愁は、変拍子的なテーマを持つ6/8のマイナーブルースなりました。

つづきは、